開業に至った経緯(3)


開業までの道のり
新たな決意
 私は、労働組合の専従とうつ病患者の家族になったことで、改めて予防の大事さや、メンタル不調の再発予防 のための職業リハビリの重要性を実感し、その上でそのような支援ができる資源の少なさを強く感じました。父へのサポートを間近で見たことで、母の仕事の内容を初めて理解でき、私も社会資源を充実させるために一役買 いたいと思うようになりました。
 どんたく出場2年目を迎え、リーダー、サブリーダーも後輩に引継ぎ、陰でサポートしながら当日の運営まで 滞りなく完了できた姿をみて、「もう、私がいなくても大丈夫」と思えたこともあり、退職して新しい人生をスタートさせることにしました。


いばらの道
 母のNPO法人に入ってからは、試行錯誤の日々。事業収入が年間400万程度の事業所でしたので、まずは 売り上げを伸ばすことも考えないといけませんでした。また、知識と経験不足を補うため、専門学校に入り資格 取得のための勉強も必須ですから、多忙を極めました。そして何より大変だったのは、復職支援の現場対応です。 参加する方は、全員メンタル不調で休職し、これから復職に向けた準備が必要な方です。そんな大事な時期に、自分の言動一つで悪い影響がないとも限らないので、かなり神経を使いました。母の支援の仕方を見ながら、見よう見まねでやっていきました。


会社設立
 場数を踏み、少しずつ知識と経験を積み重ねた3年目。私は株式会社 KAIKA を立ち上げました。カイカと読むこの会社は、「希望の花が咲くように」との願いを込め、NPO法人に携わるメンバーで出資して設立しました。NPO法人をやっていて見えてきた課題の一つが、中小零細企業に勤めるメンタル不調者への対応についてです。社内でのサポートはほぼ皆無であり、休職制度がない会社も多いため、病気し休みが必要になってしまう と失業がセットになるケースがほとんどでした。失業すると生活基盤が不安定になり、症状を悪化させるため仕 事に就けないという悪循環になります。これはなんとかしなければと思いました。


費用負担を軽減したい
 中小零細企業に勤める人を支える仕組みを考えていた時に思い出したのが、復職支援を障害福祉サービスでやっている事業所のことでした。知人の友人が経営していたため、開設して間もない時に見学に行かせてもらっていたのです。東京にあるその事業所は、開設当初は利用者が少ないという話でしたが、すぐに数は増えていき現在は数店舗に拡大しています。
 うつ病は女性の方が男性の2倍ほどですが、自殺者を性別に見ると、7割近くが「男性」であり重症化する傾 向にあります。年齢は「50代」、次いで 40代、60代に多くなっており、働き世代に多いことがわかります。家族を養う責任を負い、住宅ローンや教育費等が重くのしかかる中、自分のためにお金を使える人がどれだけいるでしょうか。
 カウンセリングや心理教育など再発予防に必要な支援を受ける費用が捻出できずあきらめてた人を救えるようにとの思いで、公的資金でサポートできる仕組みに行きつきました。障害福祉サービス事業所として県に登録し、みなさんからいただく費用は1割で済むようになりました。


キャリア・アカデミー鳥栖とは
 私たちの事業所は職場復帰や社会復帰のためのトレーニング施設です。
 復帰後を想定し、それに似た環境に身を置き、段階的に負荷をかけることでギャップを縮め、再発を予防します。なお、健康回復には、食事・運動・睡眠など生活習慣を見直す必要がありますし、職場復帰するためには仕 事の遂行力も必要になります。どれも即効性はありませんが、着実に回復過程をたどっていきます。必要な知識を手に入れても、食事や生活習慣など行動を見直さなければダイエットは成功しないように、職業リハビリもご 自分が努力しない限りいい結果には結び付きません。地道な努力こそが近道だといえます。


病気との両立
 病気を持ちながら仕事をしている人向けの就労継続サポートもしています。週に1度くらいの頻度で仕事帰りに立ち寄っていただき、1時間程度のカウンセリングをしています。現状の課題に対し一緒に考え解決しやすくすることで、悩みや落ち込みにならないようにサポートする中で、このようなフォローアップこそが、再発予防のカギだと実感しています。


引きこもりを脱却し、希望のある未来へ
 現在、キャリア・アカデミー鳥栖では、何かのきっかけで引きこもり状態が続き、社会に出てくる機会を失ってしまった方へのサポートも行っています。定期的にご自宅を訪問し、スタッフとの関係構築や外出の頻度を増やし、徐々に通所に切り替えてグループの中にもなじんでいけるように支援しています。また、ご家族の心配や不満を軽減することで、家族関係が変わっていくことも目の当たりにしています。


最後に
 父の健康を回復させたのは、いろんな人からの心温まるサポートでした。「人が薬だ」と父もよく言っているように、 私自身も皆さんの回復していく姿を見ながら日々、実感しています。
 どうか一人で抱え込まず、悩みや困りごとがあれば打ち明けに来てください。あなたの本来の姿に戻り、独り立ちでき るようになるまで、私たちスタッフが全力でサポートしますので。

 あなたの希望の花が咲きますように。
株式会社 KAIKA 代表取締役 安藤康子


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